特定非営利活動法人 日本免疫学会

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日本免疫学会概要

理事長メッセージ


新理事長就任にあたって

この度、審良静男理事長を引き継ぎ、2018年12月末まで2年間、日本免疫学会理事長を務めることになりました。当学会の発展のため微力ながら力を尽くす所存です。会員の皆様のご協力とご支援をお願い致します。

現在日本免疫学会として取り組むべき課題がいくつかありますが、重要なものは、日本の免疫学研究の一層の活性化、それを担う若手免疫学研究者の育成と支援、加えて学会の国際化でありましょう。

19世紀末、北里柴三郎、フォン・ベーリングによる破傷風血清療法から始まり、20世紀を通じてポリオ、天然痘などに対する様々なワクチンが開発され感染症の予防が大幅に進み、そして21世紀初頭の今日、免疫チェックポイント、CAR-T療法など、悪性腫瘍に対する免疫療法が社会の注目を浴び関心を集めています。このような免疫学の成果の背景には、言うまでもなく、基礎免疫学の発展、深化があるわけですが、免疫学の特徴のひとつは、他の生物学分野に比して、基礎研究とヒトへの応用(臨床応用)の距離が短いことです。実際、免疫学の基礎研究で圧倒的に使われる生物種は、ショウジョウバエでもセンチュウでもなく、進化的にヒトに近いマウスです。今後、様々な解析技術(例えば単一細胞レベルでの遺伝子発現解析)の進歩、比較ゲノム科学などの深化により、マウス、ヒトを同列に解析できるようになり、マウスで得られた知見がヒトの免疫系にもつ意味を同時に確認することも益々容易になるでしょう。さらには、ヒトの免疫系を直接解析して得られた重要な概念をマウスで確認する必要も増えてくるでしょう。ヒトの免疫系に対する介入治療(例えば、サイトカイン中和抗体、細胞表面機能分子に対する阻害抗体、細胞傷害性抗体の投与)に伴う免疫系の変化は基礎研究を促す多くのヒントを与えてくれます。例えば、免疫寛容に関心のある免疫研究者には、免疫チェックポイント抗体によるヒトがん免疫の亢進と自己免疫の出現は、マウスでの知見を確認するのみならず、自己抗原、"自己もどき"のがん抗原に対する末梢性免疫寛容メカニズムの重要性を改めてヒトで確認したことになります。IL-1阻害による2型糖尿病の改善効果は所謂退行性変化と考えられてきた疾患における炎症の関与、炎症の制御による疾患制御の可能性を意味します。アルツハイマー病、動脈硬化、肥満などで、その第一義的原因が炎症ではないにしろ、生体物質の変性がインフラノゾームなどの活性化を介して若干ながらも炎症を惹起するのであれば、従来非炎症性と考えられてきた多くの疾患でも、免疫系を標的とする治療・予防の有効性を期待させます。抗体療法、細胞療法に代表されるように、ヒトの免疫系に対する介入技術、解析技術は、今後世界的に急速に進むと予想されます。言うまでもなく、自己免疫、腫瘍免疫、臓器移植、アレルギーなど、免疫学には多くの解決すべき課題が依然としてあります。免疫学は、神経精神疾患など未開拓の分野へも今後発展して行くでしょう。どの免疫学研究でも、最も"情報提供性の高い動物"であるヒトから得られる情報は、基礎研究の新しい種を生み出し、免疫学の活性化に寄与するでありましょう。ワクチンによって天然痘の撲滅が可能となったことを忘れず、免疫学に多くの心踊るブレイクスルーが日本発で生まれることを期待します。

人材育成に関しては、ここ数年、免疫学会の会員数、学術集会の演題数、参加者数が減少しており、免疫学の退潮を危惧する声もあり、当学会の将来を展望する時懸念材料の一つとなっています。日本の若年者人口の減少傾向(現在の20歳代人口は30歳代人口の約20%減)も学会員減少の一因ですが、会員数減少の見られない他の生物系学会もあることを考えれば、免疫学会をより魅力ある学会にすべく何らかの努力が必要です。免疫学会では、若手研究者支援・育成事業として、免疫学会賞をはじめ各種学会賞の選考と授与、当学会名誉会員岸本忠三博士の支援により創設され大学院生の学位研究支援、若手研究者の自立支援を目的とする「きぼうプロジェクト」の選考、「サマーインターンシップ」の支援、また免疫学啓発事業として、「免疫サマースクール」、「免疫ふしぎ未来」を開催してきました。今後もこれらの事業の継続と一層の発展を目指します。一方、上述の免疫学の活性化とも関連して、他の生物学・医学領域の若手研究者、医師に対しての免疫学会への入会を勧誘していきたいと思います。さらに、若手研究者の自立に必要な研究費支援を強化すべく、他の学会とも協力して公的科学研究費による支援強化、免疫学関連の公的研究プロジェクトの発足、増加を働きかけて行く必要があるでしょう。

日本免疫学会の国際化については、学術集会における英語での研究発表が定着しつつあります。これが、韓国、中国など近隣諸国からの学術集会への参加に繋がって欲しいものです。また、免疫学会は国際交流支援として、理研との合同国際シンポジウムの開催、若手研究者の国際学会への参加支援などを行ってきました。今後、日独、日仏、日米など二国間で非定期的に行われている交流シンポジウムを日本免疫学会の定期的公式行事として開催し、研究者間の国際学術交流を促進していくことも考えたいと思います。

日本免疫学会の更なる躍進・飛躍のため、本学会の活動に対する会員の皆様の理解と学会運営への積極的な参加をお願い致します。


特定非営利活動法人 日本免疫学会
理事長 坂口 志文
SHIMON SAKAGUCHI
大阪大学