特定非営利活動法人 日本免疫学会

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日本免疫学会賞 第8回(平成17年)受賞者

「インテグリン接着制御による免疫細胞動態調節」


木梨 達雄

(関西医科大学肝臓研究所)
<業績評価の内容と受賞理由>
木梨氏は、免疫応答における細胞接着の機能を解析する目的で、インテグリン分子の活性化のシグナル伝達機構を解明する研究を一貫して押し進めてきた。とりわけ、所謂inside-outシグナルとして知られる種々のレセプター刺激によってインテグリンが活性化される機構の解析の中から、Rasの拮抗分子として抑制機能を有すると考えられていたRap1が、インテグリン活性化を誘導する正のシグナル分子であることを明らかにした。免疫系においてRap1が、ケモカインによるインテグリン活性化を担うことも判明し、 Rap1が免疫シナプスや細胞移動や細胞極性の制御を広く司ることを明らかにした。更に、Rap1のこれらの機能を担うエフェクター分子としてRAPLの単離に成功した。 RAPLの機能解析とその欠損マウスの解析から、RAPLはRap1と会合して、リンパ球の接着・遊走・ホーミングの制御に重要であることを明らかにした。これらの研究成果は、全体としてリンパ球の機能制御に新たな視座を与えているともに、新たなタイプの白血球接着不全症の発見など臨床的にも興味ある展開をしている。  これらは、木梨氏の独自性の高い研究として一貫して発展させて来たものであり、競争の激しいインテグリン研究の中で、世界的に追随を許さない優れた研究となって結実している。インテグリンを介する制御は、免疫細胞動態制御の中心を担い、その破綻としてのアレルギー・自己免疫疾患・慢性炎症などの治療・開発にも今後繋がると考えられる。また一方で、一つの分子の一貫した解析から生命活動全体に関わる制御の研究に発展している経過は若い学会員の大きな励ましであり、今後の広い分野への大きな展開が期待される。

「インテグリン接着制御による免疫細胞動態調節」


熊ノ郷 淳

(大阪大学微生物病研究所)
<業績評価の内容と受賞理由>
熊ノ郷氏は、それまで神経軸索伸長のガイダンス因子とされてきたセマフォリンファミリーに属するSema4D(CD100)を同定して、そのレセプターがB細胞や抗原提示細胞に発現する抑制性受容体であるCD72であることや、 T細胞上のSema4Dを介する刺激がCD72の抑制機能を解除してB細胞や樹状細胞を活性化する分子機構を明らかにした。 Sema4D欠損マウスを用いた一連の研究は「免疫セマフォリン」という新しい研究分野を切り開く端緒となっている。さらに樹状細胞で表現されるセマフォリンファミリーとしてSema4Aを単離し、そのレセプターがT細胞上に発現しているヒトA型肝炎ウイルス受容体と相同性を有するTim-2であり、 Sema4Aを介したTim-2への刺激がT細胞活性化に重要であることや、生体内ではTh1/Th2の制御に重要であることを明らかにした。また最近では、心臓の初期分化に関与するSema6Dや骨髄ストローマ細胞に発現するSema3Aなどの新しいセマフォリンファミリー分子の免疫系における機能を解析している。このように熊ノ郷氏は、それまで神経生物学の領域で注目されていたセマフォリン分子群の免疫調節機構における重要性を明らかにしたパイオニアであり、その独創性は高く評価され、今後のさらなる発展が大いに期待される。