KTCCの歩みと今後


桂 義元 Yoshimoto Katsura 京都大学再生医科学研究所
http://ouyouigaku.co.jp/

 

 KTCC(Kyoto T Cell Conference)は, 胸腺とT細胞生成について意見交換ができる会として 1991 年に発足した研究会である.国際シンポジウムとして行ったこともあるが,通常は年1回の国内での集会を行っている.出席者は100人を越えないように努めている小さな研究会であり,JSI Newsletterに紹介記事を書くなど晴れがましいことではある.KTCCについて私が語ることができるのは主に発足についてであり,“歩み”はメンバーによる自律的な面が強く,“今後”は次世代の人たちに依存している.

 研究領域にかかわらず,免疫学会のような全分野を統括できる学会が必要なことはいうまでもない.しかし学会が大きくなりすぎると,その時々の話題の研究が注目される傾向が強まる.新しい仕事の多くは最初は小さく目立たず,やっている本人もどれほどのものか理解できていないことも多い.気力と研究費が続かなければやめてしまうことすらある.そのような研究を育てる方法はないものかというのがKTCCをつくった動機であった.

 発足当初のKTCC抄録集の巻頭言を一部引用させていただく.「……わが国の研究者の貢献は決して小さいものではないと思います.しかし,発見の手がかりとなるアイデア,新しい実験法の開発など多くの点で欧米の後を追うかたちになっています.たとえばクローン選択説の提唱,T細胞の発見,Vβ抗体の作成とクローン死滅の証明,あるいはセルソーター技術,ハイブリドーマ法,……の開発に日本人の貢献は…….これらを成し遂げるまでには大変な努力を要した反面,アイデア自体は至極単純なものが多いことに気づきます.……学問であれ政治であれ,この国では基本に立ち返って論議する土壌というべきものが培われなかったか,または風化した状況があったように思えます.そのような土壌を甦らせるなど個人や小さな研究会の手にあまることですが,KTCCはそれを行い得るシステムをかたちづくるべく企画したものです.したがってこの会は,“りっぱな講演を拝聴する”というのではなく,参加者全員が意見を持ち寄って会話するための場であります.規模を80人ほどと……」.

 少々気負っているふうでもあるが,物事を始めるにはちょっとくらいはがんばらないとやれないものである.巨大な学会と小さな研究会では,個々の会員にとってはかかわり方がまったく異なる.フランスのINSERMが組織する会合や,1989年から始められたオランダ RolducでのThymus Workshopなどに出席してみると,いずれも100人を上回らない小さな会で,ほとんどすべての研究グループから演題が出されて議論も夜遅くまで続けられる.それでいて昼間はレクレーションである.このような組織こそ研究や研究者を育てる力があるにちがいないと思わせるものであった.

 わが国でも,小グループの会がなかったわけではない.免疫学会は,免疫化学研究会,免疫生物研究会,補体シンポジウムを統合してつくられたのであるが,補体シンポジウムだけはその組織を残して現在も続けられている.また,科研費に関連する班会義なども行われてきた.私にとってより身近であったものは堀内篤先生の主催による胸腺免疫研究会(1983〜1994年)である. この会はシンポジウム形式であったが,演者にかぎらず出席者の多くがそれぞれ面白い仕事をしていることを理解することができた.このような経験を経て, わが国でも Rolduc Workshop的な研究会をつくることができればと考えるに至ったのである.

 KTCCのような小さな集会は,たとえば大学のクラス会へ出かけるような安心感がある.独創的であればその分だけ不安であり,しかもおそらくは未完成な話題を提示するには,それを受け入れる雰囲気が不可欠である.このような研究会が他の分野でもたくさんつくられ,学会はそれらを統合するものとなればよいのではないかと思っている.

 KTCCは今年で9年目となる.次世代の人たちに,研究交流の場としてさらに使いやすいシステムを残すのが私たちの使命ではないだろうか. 私としては,実は100人程度に限定した研究会ということに次の2つの点で不安を覚えていた.・他分野との交流に支障をきたさないか,・レベルの低下につながらないか.折しも,これらの点を含めて今後10年間のKTCCのあり方についてアンケート調査を行ったところである.結果は,現行の方式に少しばかりの手直しをすればよいという意見が多かった.一抹の不安を覚えながら企画運営にたずさわった者として,肩の荷をおろすことができた思いである.今後を託す人たちに不足はない.10年後には,再び誰かがJIS Newsletterに,KTCCの次の世代について書く日がくるかもしれないなどと思いめぐらしている.


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最終更新日: 2004/02/04 JST