新理事長就任にあたって


 

 

 この度、日本免疫学会理事長を拝命し、会員の皆様に御挨拶出来ます事、身に余る光栄に存じます。

 

 日本免疫学会は2020年に創立50周年を迎えます。この間、免疫学は、分子・細胞レベルでの免疫機能・発達研究からイメージングやバイオインフォマティクスによる網羅的・時空間的解析、さらには、組織・個体レベルでの免疫の場の理解へと、医学・生命科学の一大学問領域として発展しました。そして、最先端基礎研究から生まれたIL-6抗体、チェックポイント阻害剤、TLRに代表される自然免疫の理解、ケモカイン・サイトカインに代表される免疫制御分子群の発見、制御性T細胞に代表される免疫抑制機構の理解、免疫ビッグデータの構築と利活用、再生医学における免疫学、腸内微生物と免疫系間相互依存制御を介した共生と排除、粘膜免疫システムを駆使したワクチンや減感作療法による予防・治療法の開発などの臨床応用研究など、各時代に即した最先端研究が展開されてきました。昨年10月には、本学会名誉会員の京都大学特別教授本庶佑先生によるPD-1の発見とその基礎研究の集積から生まれたチェックポイント阻害剤の開発に繋がった功績に対して、ノーベル生理学医学賞が授与される吉報に日本中が湧きました。我々日本免疫学会として大変誇りに思い、本学会を代表して心よりお祝い申し上げます。一方、米国免疫学会でも活躍され、IgEの発見で世界に知られる本学会名誉会員、石坂公成先生がご逝去され、我が国が誇る免疫学の巨星を失い、会員を代表して心より哀悼の意を表します。

 

 この半世紀における免疫学の学問としての成熟の結果、多くの学会同様、当学会も今までのような成長戦略だけでは立ち行かない時期に来ました。少子超高齢化や、社会的価値観と情報社会構造の変革に伴い、学会への帰属意識や学術活動への価値観も変化し、会員数および学術集会参加者数の減少は解決すべき喫緊の課題となりました。これに対し、審良元理事長、坂口前理事長、各学術集会大会長、そして執行部の皆様の大変なご尽力のおかげをもちまして、学術集会参加者数が増加に転じてきた事に深く感謝申し上げます。この軌跡を基盤に輝き続ける日本免疫学会として、未来志向の継続性と斬新性を有した学会運営、価値観の変化に対応する会員サービスなど会員全体で考えていく事が大切であり、その目標達成に向けて会員の皆様と共に邁進する所存でございます。

 

 現在、免疫学は全ての生命現象、多様な疾患に関連する横断的研究分野となり、様々な学会、研究領域との連携、臨床家、異分野の研究者、企業の研究者との交流が必須と考えます。また日本免疫学会が次の50年も世界を牽引していく為に、世界各国の免疫学会、特にアジア、オセアニア地域からの学術集会参加者獲得も含めた学術交流、そして次世代を担うグローバルな研究者を多数育成できる体制作りが必要です。「内向き」になることなく、常にチャレンジし、失敗を恐れない会員の皆様の研究者魂を集結して、世界の免疫学を先導する日本免疫学会として継続的に進化する為に、会員一丸となって歩みましょう。次世代を担う免疫研究者が臆することなく、夢を抱き、世界を相手に最先端の研究を進めるために、国内外研究者が切磋琢磨する場を、国際共同研究創出の場を、そして世界視点での学術交流の場を、当学会が提供していく環境作りを共に推進していきましょう。一研究者、一学会員、そして理事長として、これまでの50年に及ぶ日本免疫学会の素晴らしい伝統を受け継ぎ、今後50年の国内外の免疫学研究発展に貢献できるよう、微力ではありますが鋭意努力してまいります。引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。Go and Challenge for the Next Half Century, Global JSI!! 

   

特定非営利活動法人 日本免疫学会

理事長

清野 宏