日本免疫学会ヒト免疫研究賞

JSI Human Immunology Research Award

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歴代受賞者

第5回(2018年)

河上 裕「ヒトがん免疫病態の解明によるがん免疫療法の開発」

(慶応義塾大学 医学部 先端医科学研究所 細胞情報研究部門)

<研究評価の内容とその理由>

河上裕氏は、留学中から現在まで約30年に亘り一貫してがん免疫研究を続けてきた。特に、世界に先駆けてのヒト腫瘍抗原の同定は基礎科学としてのヒト腫瘍免疫学、さらには癌免疫療法の発展に大きく寄与した。また、がんのDNAミスセンス変異の結果として同定したネオ抗原は、現在注目されている免疫チェックポイント阻害の主要な抗原であることがわかっている。また、世界13機関の国際共同研究により、大腸がんの腫瘍浸潤T細胞が術後予後マーカーとして重要であることを見いだし(Lancet 2018)、新規診断法として期待されている。 近年では腫瘍の免疫逃避機構の研究や、さらに、がんに留まらず、自己免疫疾患、感染症、移植(GVHD)と、広くヒト免疫研究に取り組んでいる。 このように、河上氏が癌免疫研究を中心に精力的にヒト免疫研究に取り組んできた功績は世界的にも高く評価されていることから、今後の発展が大いに期待される。

第4回(2017年)

木下 タロウ「発作性夜間ヘモグロビン尿症の発症メカニズムの解明」

(大阪大学 微生物病研究所 寄附研究部門)

<研究評価の内容とその理由>

木下タロウ博士は、1993年に発作性夜間血色素尿症(PNH)の原因遺伝子としてPIGAを発見し、以後PNHの発症機構およびその治療法開発について優れた研究成果をあげてきた。PNHの発症機構に関して、PNHではPIGAの体細胞突然変異によってGPIアンカー型タンパク質の発現が欠損した多能性造血幹細胞ができることがその病因であることを見出した。また、GPIアンカー型タンパクの生合成に関わる20を越える遺伝子群を同定し、PIGA変異がすべてのPNHの発症に関与することも明らかにした。これら一連の研究成果は、PNHに対する抗C5抗体療法の科学的根拠となった。  このように、木下博士はPNHの原因遺伝子の同定を契機として、PNHの病態発症機構から治療法の開発研究に関して顕著な業績をあげ、世界的にPNH研究領域をリードしてきた。  以上の理由から同博士を第四回日本免疫学会ヒト免疫研究賞受賞者とした。

第3回(2016年)

松島 綱治「サイトカイン・ケモカインの基礎研究を通した免疫難病治療への貢献」

(東京大学大学院医学系研究科 分子予防医学教室)

<研究評価の内容とその理由>

松島綱治博士は、1980年代初頭、ヒトIL 1β活性体のN-末端を明らかにするとともにそのヒト産生細胞株を同定し、その後のIL 1βconverting enzyme(ICE/Caspase 1)遺伝子クローンング, 自己炎症症候群発見の基盤を作った。同氏は、1987年にケモカインの最初の分子であるIL 8(CXCL8)、1989年にはMCAF/MCP-1(CCL2)を発見するとともに、ケモカインが炎症・免疫反応時の白血球浸潤を特異的に制御することを明らかにし、ケモカインの生物学を大きく発展させた。さらに同氏は、ヒトケモカイン受容体に対する抗体を作製し、ケモカイン受容体CCR4がアレルギーに関連するTh2のみならずヒト成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)に選択的に発現することを見いだした。ADCC活性を付加したヒト型抗CCR4抗体(モガムリズマブ)は、2012年に日本でATLLに対する治療薬として承認され、がん領域での我が国初の抗体医薬となっている。現在、欧米においてT細胞白血病治療薬としてだけでなく、担がん時の免疫抑制細胞もCCR4陽性であることから、がん免疫抑制解除薬としての様々な免疫チェックポイント抗体との併用の治験も国内外で進行中である。  このように、松島博士は、ケモカイン研究の先駆者として顕著な業績を挙げるとともに、それを基盤とした免疫難病治療に大きな貢献をしてきた。これらの理由から同博士を第三回日本免疫学会ヒト免疫研究賞受賞者とした。

第2回(2015年)

西村 泰治「ヒトT細胞の抗原認識と免疫応答の解析:その疾患感受性解析と免疫療法開発への応用」

(熊本大学)

<研究評価の内容とその理由>

西村泰治博士は、1980年代から、HLA多型によるヒトの免疫応答性と疾患感受性の個体差の形成に関する研究において優れた研究成果をあげてきた。中でも、A群β溶連菌由来の抗原に対するヒト末梢血T細胞の免疫応答の個体差が、HLA遺伝子多型によるものであること、HLA-DP対立遺伝子を日本人で初めて同定し、その対立遺伝子頻度が白人とは大きく異なること、またHLA-DQ分子がMHCクラスII分子として抗原提示機能を有し、これはHLA-DR分子とは異なる機能的特徴を有することなどを明らかにし、世界的にこの研究領域をリードしてきた。これらの研究は、自己免疫疾患の自己抗原やがん抗原の同定とその機能解析の研究に引き継がれ、自己免疫疾患感受性や腫瘍免疫療法の研究に発展してきている。このように、西村博士は、HLAの研究を中心として、一貫してヒトの免疫学研究を推進し、この領域で顕著な業績をあげ、世界を牽引してきた。  これらの理由から同博士を第2回日本免疫学会ヒト免疫研究賞受賞者とした。

第1回(2014年)

山本 一彦「ヒト自己免疫疾患の解析」

(東京大学)

<研究評価の内容とその理由>

山本一彦博士は1980年代か らの自己抗原遺伝子と抗原決定基の解析に続いて、抗原特異的なT細胞の免疫応答を可視化するT細胞受容体(TCR)のユニークな解析法を確立し、種々の疾患での抗原特異的なTCRクローンが存在する事を明らかにした。さらに山本博士は関節リウマチや膠原病の疾患関連遺伝子のSNP解析やゲノムワイドのGWAS解析を行い自己免疫疾患関連遺伝子や感受性遺伝子を多数報告した。これらは更に国際共同研究として、多民族にわたるメタ解析へと発展し、さらに創薬への新しい方向性も示している。また山本博士はFoxp3陽性の制御性T細胞とは異なる抗体産生を強力に制御 する第2の制御性T細胞を発見しており今後もヒト疾患における本細胞の意義を明らかにすべく精力的に研究を推進されている。このように山本博士はヒトを対象とした免疫学領域における世界的なトップ ランナーである。同時に多数の若手ヒト免疫学研究者を育てた功績も大きい。これらの理由から同博士を第一回日本免疫学会ヒト免疫研究賞受賞者とした。