日本免疫学会女性免疫研究者賞

JSI Women Immunologist Award

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歴代受賞者

第5回(2018年)

反町 典子「オルガネラホメオスタシスを機軸とした炎症制御機構の解明」

(国立国際医療センター研究所 分子炎症制御プロジェクト)

<研究評価の内容とその理由>

反町典子氏は、リンパ球や自然免疫細胞の免疫応答を制御する受容体に関する研究に従事し、炎症の分子機構の理解と治療応用に資する研究成果をあげてきた。抑制型NK受容体LY49QがエンドソームにおけるTLR9シグナルを介してpDCにおけるインターフェロン産生に関わること、エンドソームにおいてケモカインシグナル維持に関わり好中球制御に関わることを解明した。また、リソソーム局在型アミノ酸トランスポーターであるSLC15A4に注目し、エンドソームにおけるTLR9シグナルとインターフェロン産生制御およびNOD1リガンドの細胞質輸送に関わることを解明し、炎症性腸疾患への関与を明らかにした。マウスSLEモデルでは、SLC15A4がエンドソームpHを制御してmTORC1活性を制御しTLR7依存性インターフェロン産生をコントロールすることを解明した。以上のように、反町氏は、NK 受容体の研究およびオルガネラホメオスタシスに注目した炎症制御機構解明において独自の視点を提供し免疫学の発展に大きな貢献をし、今後の発展が大いに期待される。また、学会活動を通じ日本の免疫学の周知・活性化にも大きく貢献した。これらの理由から同氏を第5回日本免疫学会女性免疫研究者賞受賞者とした。

第4回(2017年)

COBAN, Cevayir「Immunology of host-Plasmodium parasite interactions」

(大阪大学 免疫学フロンティア研究センター マラリア免疫学)

<研究評価の内容とその理由>

COBAN, Cevayir氏は、一貫してマラリア感染症に対する治療・診断法、ワクチン開発の研究を行ってきた。マラリア原虫によるヘムの代謝産物ヘモゾインがTLR9のリガンドであることを見出し、脳マラリアでは宿主にとって負の方向に作用すること、一方で効果的なワクチンアジュバントになり得ることを示し企業に導出した。また、鉄調節分子リポカリン2が抗マラリア免疫応答に重要なことも示した。また磁気共鳴イメージングや多光子顕微鏡を駆使して、これまで知られていなかった脳の嗅球が脳マラリアを引き起こす起点となる脆弱な標的組織であることを示した。さらにマラリア感染が骨粗鬆症の原因になることをも見出し、自然免疫系を介する誘導機構を明らかにした。  これら一連の研究成果は、マラリア感染病態の解明だけでなく、マラリアワクチンによる予防、嗅球を標的組織とする脳マラリア治療法の開発、マラリア感染の副作用である骨粗鬆症の改善といった明確な研究及び治療の方向性を提示しており、今後の発展が大いに期待される。  これらの理由から同氏を第4回日本免疫学会女性免疫研究者賞受賞者とした。

第3回(2016年)

片桐 晃子「リンパ球動態制御機構の解明」

(北里大学 理学部 生命科学科 免疫学講座)

<研究評価の内容とその理由>

片桐氏は、免疫系細胞の移動の分子機構とその生理的・病理的意義の独創的な研究を展開しており、細胞移動制御の免疫学的理解に大きく貢献している。まず、ナイーブリンパ球が高内皮細静脈(HEV)上に提示されたケモカインにより速やかに低分子量Gタンパク質Rap1を活性化させ、インテグリンLFA-1の接着活性が上昇することでリンパ節内に移動できることを発見した。  さらにRap1下流の分子としてRAPLおよびMst1を同定してこの一連のシグナルカスケードがリンパ球の極性形成にも重要であることを示し、これらの業績は国際的にも特に極めて高く評価されている。また、このカスケードに関与する分子のT細胞での欠損マウスがリンパ球減少症を来し、末梢性寛容が破綻して自己免疫疾患を発症することを示した。最近ではRap1シグナルが腸管恒常性の維持にも関与することを示すなど、Rap1を基軸にリンパ球移動の分子機構とその病態との関連を一貫して追究し、この分野の先駆的な業績を次々と挙げており、今後の発展が大いに期待される。  これらの理由から同氏を第三回日本免疫学会女性免疫研究者賞受賞者とした。

第2回(2015年)

東 みゆき「共刺激分子の機能解析と免疫制御法開発」

(東京医科歯科大学)

<研究評価の内容とその理由>

東みゆき氏は、大学院生時代に、T細胞機能分子に関する研究に携わって以来、T細胞の免疫制御に不可欠な働きをしている補助刺激分子機能とその病態への関与について研究を続けてきた。特に、発見当時接着分子のひとつと考えられていた CD28分子が T 細胞の抗原特異的応答を制御する重要な分子であることを発見すると共に、 CD28受容体の第2リガンド分子としての CD86 (B7-2)を世界に先駆けて同定した。さらに、免疫寛容、がん免疫、自己免疫、移植免疫などについて、国内外の多くの研究者との共同研究を精力的に行うことにより、この CD86分子の生物学的な役割や機能を明らかにしてきた。免疫の教科書に記述される免疫寛容における CD28/CTLA-4:CD86/CD80経路の関与や、アバタセプトをはじめとする分子標的薬の臨床応用に、それらの研究成果が大きく貢献している。また、免疫学分野の教授としての研究・教育に加え、学長特別補佐や副理事として大学の運営にも関与すると共に、日本学術会議連携会員および会員として、学術の発展にも取り組んでいる。  これらの理由から同博士を第2回日本免疫学会女性免疫研究者賞受賞者とした。

第1回(2014年)

稲葉 カヨ「樹状細胞の機能解析」

(京都大学)

<研究評価の内容とその理由>

稲葉カヨ氏は、その発見から応用に至るまで一貫して樹状細胞の研究を続けてきた。 80年代当初、それまで知られていなかったマクロファージと異なる樹状細胞が、T細胞の活性化、抗体産生応答の誘導に重要であることを発見してから、樹状細胞による抗原提示とT細胞の活性化のメカニズムを次々と明らかにし、樹状細胞の特異的受容体と抗原処理のメカニズムも勢力的に解明している。さらに、樹状細胞の分化の機構を解明し、末梢組織から樹状細胞が培養・増殖させることができる技術を開発し、樹状細胞の培養を可能にすることにより今日の樹状細胞を用いた抗がん細胞療法への進展に繋がる大きな貢献を成し遂げた。稲葉氏は、こうした研究を、グローバルな観点から広く勢力的に国際共同研究を進めてきたとともに、数ない女性の国立大学教授として、また数少ない免疫女性研究者を代表して活発に活動され、女性研究者の促進を積極的に進めている。これらの理由から同博士を第一回日本免疫学会女性免疫研究者賞受賞者とした。